なんで伝統工芸なのか?
記憶から消えない Japanese Traditional Craft
~伝統工芸と旅 Japanese Traditional Craft~
伝統工芸がおもしろいです。
自分自身は職人でもなんでもありませんが、ここ数年たくさんの日本の伝統工芸に触れる機会がありました。
たとえば秋田・大館のまげわっぱ、山形・鶴岡の絵蝋燭、北海道のアイヌ刺繍、東京・千駄木の飴細工、金沢の金箔や、京都の版画、広島の熊野筆、佐賀の唐津焼に、沖縄では壺屋焼や琉球ガラスなどなど、全国でバリエーションと個性が豊かな伝統工芸に出会いました。
国が認めた伝統工芸となると「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」というのがあって、経産大臣のお墨付きが必要になるそうです。
でも個人的には、もっと自由でおおざっぱに
「その土地で数百年にわたって続いてきた家内制手工業」
それを伝統工芸と捉えています。
だからたとえば、信州の蕎麦や讃岐のうどん、土佐のかつお藁焼き、そして京料理といった各地の食文化、加えて日本酒や焼酎だって伝統工芸と呼びたくなるし、実際にそれらが生まれる場所に行ってみると、これはもう伝統工芸としか思えないと感じます。
その伝統工芸が生まれる土地土地を一度訪れると、忘れっぽい自分なのに不思議なくらいに記憶から消えない。
けっして派手な場所ばかりではないのに。
「この感じはなんなんだ?」
自分なりに考えてみたところ――。
いい街で、魅力的な人が、いいものを作る文化
その3つが凝縮されるから、いつまでもしみじみとおもしろいんじゃないかと。
その土地の空気を感じる存在
まずはやっぱり、作品そのものが発する雰囲気、親密なオーラです。
伝統工芸品もいろいろですが、共通する特徴をおおざっぱに言ってしまえば、穏やかな形や色合いと、それが生む佇まいだと思います。
柔らかい線と色彩の感覚、手にすればしっくりくる形。
あのさりげない存在感はなんなんだろう?
「いい役者は舞台上の空気の色を変える」と言いますが、伝統工芸品もそこにあるだけで周りの空気を落ち着かせる雰囲気があります。
しかもいつもすごいなと思うのが、見た目だけでなく、日常生活で使う道具としても一級品なところです。
考えてみれば当たり前ですよね。
形も機能も、何百年にもわたってたくさんの人に使われてきたうえで、今でも続いているわけですから。
芸術的ではあるけど、芸術品ではなく、日常生活で役立つ優れた道具。
だから手にした時の感触も大事で、目で触れて、手に乗せると、不思議と穏やかな気持ちになってくるのが不思議です。
旅先として魅力的な場所
伝統工芸が息づいている場所は、実は旅先としても魅力的です。
伝統工芸品は、基本的に今でもその土地にある素材を活かして作られています。
だから産地の近くにはたいてい豊かな山があったり、きれいな水がふんだんに流れていたり、真っ青な海が広がっていたり、代々住み続けている人が多くいる街だったり。
「いいとこだなあ」
歩くと思わず、そう小さくつぶやいてしまう場所です。
自然が豊かで、人がいて、歴史もある。だから文化がある。
京都や金沢はまさにその典型ですが、伝統工芸と関係なく、純粋な旅行先として選ばれる場所も多くなるわけです。
土地土地におもしろい人がいる
加えて伝統工芸を生みだす人、職人さんも、話を聞くとたいていがものすごく魅力的な人たちです。
代々続いている家業を継いだという人は、ずっと親の仕事を見ながら育って、若い頃に「んなもんやりたくねえよ」と思った時代を経ながら、でも今では高いプライドを持ってやっているとか。
一方で、「親は会社員です」なんていう人が工芸品に魅入ってしまい、師匠に弟子入りして一人前の職人になってしまうとか。
背景にたくさんのドラマがあって、それぞれのポリシーを持ちつつ、いろんな想いで真剣に伝統工芸に向き合っている。
それが滲み出るから、みんな“いい顔”してるんです。
しかも、話すとおもしろい。
初対面だから最初はお互い固いけど、少し話してみると、控えめに笑ってくれるような。
そのうち「へー」と感心させられつつ、「ぷっ」と笑わせてくれるような。
「伝統工芸品」そのものはもちろんですが、いい街で、魅力的な人が、いいものを作る。
それが揃ってできる「伝統工芸」という文化がおもしろいんだと思います。
ブログ1回目は以上になります。
3月11日、伝統工芸の世界を未来につなげられたらと、あえて特別な日に公開しました。
次は1週間後、東京千駄木の職人さんに協力していただき、飴細工のオリジナルキャラクターができるまでの動画を、アップする予定です。
やっぱり凄い技です。
コメントをお書きください
岸田匡啓 (日曜日, 13 3月 2016 05:52)
ついに動き出しましたね!楽しみになる内容で期待しています。今後の記事、楽しみにしています!
ほり (月曜日, 14 3月 2016 20:34)
今後とも楽しみにしてます。