Vol.2 唐津・有田・波佐見、焼き物まっすぐ旅

※ご注意

前回の金沢のブログを載せたところ、数少ない貴重な意見の中に「本題である伝統工芸の話がなかなか始まらないではないか。前段が長すぎるのではないか」といったお言葉をいただきました。

実際にはもちろん、もっと丁寧で愛情溢れる言葉でしたけど。

ご意見ありがとうございます。今回もいただければ幸いです。

そう、そうなんです、その通りです。

でも好きに書いているとこうなってしまうので、今回も“本題”に入るまで時間がかかります。

しかも今回は唐津、有田、波佐見と巡ったのでさらに駄文の長文です。2〜3日に分けて読む必要があるかもしれません。

各章ごと、各段落ごと、どんどん飛ばして好きにお読みを!



2016.5.1
唐津、有田、波佐見を一気に
大竹一平

佐賀に勝手にシンパシー


今回は唐津へ行きます。

唐津があるのは佐賀県。自分は今は東京の練馬に住んでいますが、生まれと育ちは埼玉です。

佐賀と埼玉、佐賀と埼玉…。

埼玉は一般的に日本の全都道府県、もちろん関東の中でも、印象が薄い県なんだと思います。

東京は言うまでもないし、神奈川はミナト横浜、群馬と言えば湯の花咲く草津温泉、栃木なら世界遺産の日光、茨城は天下の水戸黄門、それぞれの地域に確固たるシンボルがある中、埼玉はこれと言ったウリが見えないからでしょう。

そのせいか、僕の周りの埼玉人たちは特に自己アピールが下手なうえ、他人から色々と厳しいことを言われても、わりと平気な顔をしている人が多いです。

子どもの頃から慣れてるんでしょうね。「埼玉のくせに」みたいな状態に陥ることに。

実際には“小京都”川越とか、秩父の長瀞を筆頭に荒川源流域の自然や日本三大曳山祭りの秩父夜祭、浦和レッズといろいろ熱いそのサポーター、イベントの殿堂さいたまスーパーアリーナに、映画『のぼうの城』の忍城だとか、埼玉西武ライオンズとか、実際にはちょいちょいウリはあるんですけどね。ちょいちょいなんです。

だから「埼玉になにがあるか知ってる?」と聞かれたら、(埼玉人を含めて)多くの人が「う〜ん」と困った顔をするのではないでしょうか?

まあ、そんな埼玉が好きなんですけど。

いきなり長くなりましたが、ようは勝手で失礼ながら、埼玉人としては、佐賀にも同じものを感じていました。

九州イチの大都市福岡の隣で、反対側には異国情緒あふれる人気観光地にして造船の街である長崎、その間にあって多くの人がただ通過しがちな県、他にも熊本、鹿児島、大分、宮崎と個性派が揃う九州の中でもっとも存在感が希薄な県、それが佐賀のイメージでした。

ひと昔まえ、はなわさんもそんなことを歌ってましたよね。


福岡、そのアジア的な気配

羽田を飛び立って間もなく、左手に富士山。

西へと向かう便でも行き先によって見える向きが右側だったり左側だったり変わるようですが、運良くこの姿を見ると嬉しくなり、気持ちが引き締まります。


今日は福岡から入って、1日で唐津、有田、波佐見を回って福岡に戻るやや乱暴な計画です。

ゴールデンウィークには日本のあちこちでイベントが開かれますが、唐津、有田、波佐見の各焼き物産地で、それぞれ名前は違いますが“焼き物祭り”が開かれます。それを一気に巡ってみようかと。

そしたらなにか感じるものがあるかもしれないと。

唐津では唐津焼きの作家、岸田匡啓さんにお会いします。

羽田朝7時10分の飛行機に乗って、ちょうど2時間後の9時10分に福岡空港に着きました。国内だとたとえば羽田から千歳に行っても1時間40分程度なので、2時間乗ると国内としては遠くに来た感じがします。

そしていつも通り、福岡に下りると独特な匂いというか雰囲気、日本の中に外国が混じった気配を感じて嬉しくなります。

大阪ともまた違う、アジアの濃度がギュッと増したような空気。


実は、今回、現地の足をどうしようか少し迷いました。

この手の旅に出る際、基本的には行動と時間が自由になるレンタカーを使います。でも今回は敢えて列車移動にしてみようかなと。

唐津の「やきもん祭り」は駅前の商店街でやってるし、有田の「陶器市」も駅前会場があります。波佐見の「陶器まつり」へは有田駅から臨時のシャトルバスで15分ほど、そのバスは15分おきに出ているそうです。

各ポイントまで辿り着けば、なんとかなりそうです。

唐津へ福岡空港から公共交通機関で行こうとすると、列車は圧倒的に本数が少なく不便で、高速バスが便利です。

ただ一応調べてみると、福岡空港駅から唐津に向かう直通列車が9時21分に出ることが分かりました。それに乗ると唐津に着いて10時半、あまり時間は取れないですが、次は11時20分に唐津を出て、伊万里で乗り継いで有田に13時前に着ける列車もありました。唐津から有田へはさらにローカルな路線で本数がごく限られるので、これはある意味ラッキーです。

(ただし唐津で知ったのですが、やきもん祭りの期間中は唐津と有田を結ぶ無料の臨時シャトルバスが出ているそうです)

急いでまわったとして有田を遅くとも夕方18時過ぎに出れば、福岡発羽田行きの最終便に間に合います。


どうするかな。

鉄ちゃんではないけど、たまにはゴトゴトとローカル線の旅も楽しそうだな。駅弁買っちゃったりして。

どうするかな。

……。


まだ福岡、「牧のうどん」でフクオカン・ソウルフード


結局、福岡空港に着いた1時間後、カーシェアで借りた軽自動車のハンドルを握っていました。

福岡県の西の端、筑前前原という駅まで地下鉄直通のJR筑肥線で移動して、そこから車です。

車にしたのは福岡空港での乗り継ぎがギリギリで列車を一本逃すと予定がだいぶ狂うこと、高速バスを使うにしてもゴールデンウィークの渋滞が少し心配だったこと、また4月に熊本・大分で起きた大きな地震の余震があれば、列車やバスだと影響を受けるかもしれない。短い日程で出たとこ勝負の強行軍だと、やはり時間も行動も柔軟に出来る車のほうが便利です。


と、もっともらしいことを言っておいて、実は車にした理由がもう1つ。

「牧のうどん」です。


ラーメンのイメージが強かった福岡ですが、地元の人に言わせると「うどんこそがソウルフード」となり、その中でもカリスマ的な求心力を持つのが「牧のうどん」だそうです。

前回、去年の11月に唐津に行った時も今回と同じルートだったのですが、道端に見かけたこのうどん屋にふと目が留まり、フラリと入ったのでした。そしてその店が牧のうどんの本店で、驚異的に柔らかくフニャフニャだけど出汁が効いててウマイうどんに、惚れてしまいました。

筑前前原から唐津に向かって車で15分ほど走ると、左手に牧のうどん本店です。


というわけで、いきなり寄り道。


本店ながらいい具合にひなびた建物で、ドアを手でガラガラと開けて入ります。

座敷とテーブル席もありますが、調理場を囲む長大なカウンター席にそっと座り、注文を細長い伝票に自分の手で控えめに書き込みます。なんせ関東から来たアウェーもんですから。思えば前回は初めてだったので、この注文システムにややとまどったものでした。


今回はその後調べて知った、牧のうどんの定番(らしい)、ゴボ天うどんとかしわ飯をユルユルと注文。

ごぼうの天ぷらと、かしわ飯は鳥の炊き込み御飯ですね。うどんの茹で加減は軟麺・中麺・硬麺と選べるので、ここは福岡らしく軟麺を。

思えば福岡でラーメン通といえば“バリカタ”なのに、うどんは軟麺なのが不思議です。

しかしさっそく出てきたゴボ天うどんにそんなことはもうどっちでもよく、テーブル据え付けの青ネギをドサッと乗せ、一口すすって「あぁ、帰ってきた」。

旨味全開のかしわ飯を頬張ってまた始まる幸せ。

表面がカリッとしたゴボ天もGood job!

いいなあ。これ。

実は我らが埼玉もうどん文化圏で、ざるうどんをゴマやけんちん風の出汁につけてズズッといくのですが、それとも違うし、ぶっかけに代表されるうどんの王様で、コシがしっかりした讃岐うどんともまた違った味わいがあります。そもそも麺が柔らかすぎだし。

うどん、懐が深いです。

ズルズル食べてる間に軟麺がさらにふやけるふやける。

でも、

またこよ。


ゴボ天うどんとかしわ飯。

It's the Fukuokan soul food !

唐津、若手作家が元気な唐津

さて。

唐津です。

牧のうどんからは1時間弱。天気がよかったので海沿いの道を爽快にドライブし、松が鬱蒼と茂る虹の松原を抜けて唐津市内に入ります。

やきもん祭りに来るのは去年に続いて2度目で、訪れるきっかけの岸田さんと知り合ったのは2年ほど前。岸田さんが東京の渋谷「炎色野」で初めて個展を開いた時、ギャラリーHPでの紹介され方がちょっと面白かったので気になって見に行き、そこで知り合ったのでした。

今は唐津駅から車で20分ほど、唐津市鳥巣という集落で、ご自身の工房「鳥巣窯」を構えています。そこは海沿いの道からどんどん山を登っていき、佐賀というイメージにはなかったほど山深い奥の奥にある静かな集落にあって、冬には雪が膝まで積もるそう。


商店街を入ってすぐ、岸田さんのブースは、ほどよく賑わっていました。

そんな中、店先をのぞくや「おー! こんにちは!」と声をかけてくださる。

やきもん祭り期間以外に唐津へ来たことがないのでなんとも言えませんが、普段はおそらくこの商店街も静かなんだろうなと思わせる佇まいです。期間中は陶芸作家たちが、やはりおそらく空きになっているらしい商店をブースとして借り、作品を並べて販売します。


唐津駅前の商店街で開かれる「唐津やきもん祭り」。

若手作家が直接自分の店を出すのが最大の特徴で、その上で全体的にのどかでユルい雰囲気なのがけっこう好きです。

ここが岸田匡啓さんのブース。

人の出入りが絶えることはない賑わいぶりでした。


そして唐津がおもしろいのは、ここだと思います。

作家が直接店を出すところ、です。

だから作品を作った本人の話を聞きながらじっくりと選ぶことができる。

そして主催者は複雑でしょうが、この後巡る有田や波佐見に比べれば人出が多くないので、のんびりじっくり見て周ったり、お祭りの和やかな雰囲気のなか作家と直接話も出来たりします。

しかも唐津の陶芸は若手作家が元気です。お店をのぞいて作品を手にしてみれば、きっと彼らと直接言葉を交わす機会が生まれます。話を聞けばきっと、焼き物に対する真摯な姿勢が見えるし、そのまっすぐな人柄と、唐津焼きをしっかり伝えて行こうという気概が感じられます。

もちろんベテラン作家から伺う話も貴重です。当然ながら興味深い話になります。ただ特に僕のような初心者には、若手作家が相手のほうがなんとなく気兼ねなく質問できるし、話をすることができます。そして一人好きな作家ができて、その人が作った作品に触れ続けることで、焼き物に対する自分なりの基準が成り立っていきます。

その感覚が楽しいなと。

その基準を自分なりに消化したうえで、新しい作品に触れ、より多くの作家の話を聞いてみたら、また世界が広がるかもしれないと。


運命の陶箱


岸田さんのブースはなかなかに賑わっていました。ふらりと入ってきた年配のお客さんから「これはあなたが作った作品なの?」なんて聞かれて丁寧に応えたり、次のお客さんに朝鮮唐津のお猪口の説明をしたりと忙しそうです。

「今日はすぐそこで熊本地震のチャリティセールをやってるんで、よかったら見てみてください。僕のも大バーゲンで出てると思うので」

そう言われて店先から指をさされた方を見ると、人だかりが出来ています。

行ってみると商店街の通りに折りたたみ机を並べ、岸田さんはじめ色々な作家の作品が並んでいました。

その値段を見てびっくり。


ほんとに大バーゲンです。

しかもそこに並ぶ1つに、目が吸いつきました。


実は岸田さんの個展などを見る時、いつも気になっている作品がありました。

四角い蓋付きの箱です。店に戻ってから聞いたら、陶箱と呼ぶそうです。女性ならアクセサリー入れにちょうど良さそうですが、使い方を考えるよりも先に、その佇まい自体に視線を吸い取られていました。

普段だと1万円札1枚ではとても買えないもので、「まだ自分には早いか」と思っていた、というか、ようは値段に腰がひけていたのですが、それがなんと半額以下。


「これください」


その黒とも濃厚なグレーとも見える陶箱と完全に目が合ってしまい、手にとってみるとしっくり来る。

四角い陶器の箱がなんでこんなに手に馴染むんだろう。思いがけず手に入れてしまったことで、フワフワとした恍惚感です。

さすがに頰ずりはしませんでしたけど。商店街のど真ん中だし。


上機嫌で店に戻って作家本人である岸田さんから話を聞くと、「あまり陶箱を出す人はいないんですけど、せっかくなので他の人がやらないことをやろうと思って」と。

チャリティーということで熊本や大分はまだまだ大変そうですが、影響を心配した唐津やきもん祭りは、見た感じだと少なくとも去年並みには人出がありそうです。

「うーん、どうだろう。人出とは別に地震は心配ですけどね。そもそも有田や他の観光地に比べると唐津のやきもん祭りはアピールが控えめだから(笑)。でも確かにここ数年で毎年来てくださる常連さんもいるんですよ」

実際、東京から「去年も来たので今年も」という方がいたり、同じように兵庫からという方も見えていました。どちらも男性で30代中盤から後半というところでしょうか。

これがその陶箱。

親密な存在感、です。

たくさん並ぶ作品を見て、作家と直接やりとりできるのが楽しいところ。

ただ、岸田さんブースの最大の楽しみがこれ。

器の形で酒の味の感じ方が大きく変わる。それを体感させてくれます。

岸田さん曰く「陶芸家には酒飲みが多いんですよ」と。

なるほど。

もちろん、車を運転する身は見てるだけです。

言い訳がましく有田


1時間半ほど唐津で過ごして、有田へ向かうことにしました。1時間弱のドライブです。

5月、こどもの日が近いことで道すがら大きな鯉のぼりを何度も見かけ、深まる山の緑と青空をバックに気持ちよさそうに泳いでいます。田んぼには水が張られ始めました。

唐津焼きが色合いや手触りに土の風合いを感じる陶器なら、有田焼きは薄手でツルッと白く洗練された印象の磁器、ある意味対照的な存在です。しかも有田焼きはこの2016年で創業400年、記念の年だそうです。

こどもの日が近かったので、道すがら大きな鯉のぼりがあちらや、

こちらで、悠々と泳いでました。

有田陶器市のメイン会場である有田駅に近づくと、大渋滞です。真っ直ぐ先、遠くに見える駅前と思われる歩行者天国は、人だかりで真っ黒。

すごい。

岸田さんが言った通り、唐津とはお祭りの規模というか、力の入れ具合と人出の多さが段違いのようです。

予定を変更して、別会場の有田陶磁の里プラザに向かうことにしました。こちらはだいぶ穏やかな状況で、問題なく駐車場に入ることが出来ました。

有田焼きというと、個人的に印象が強いのは自分の身長ぐらいあるような壺や、両腕で抱えきれないような皿、そして中国の文化を感じる独特な絵付けです。


会場を歩いてみます。

日常で使える茶碗や小皿が1,000円から5,000円と手頃な値段で並んでいます。そして唐津と違うのは職人さんが直接出店するのではなく、販売業者のお祭りという感じが強いところでしょうか。

もちろん店員さんに質問すれば陶磁器には十分以上に詳しいし、むしろ様々な作家の作品を見てきたことで客観的、もしくは個人的な見解も入れながら説明してくださるので、それはそれでありかもしれません。

毎年通っているらしいベテランの常連さんと店員さんから「今年は少し客足が寂しいねえ」、「少し心配していたんですけど、熊本の地震の影響が出ているみたいで」といったやりとりが聞こえてきました。


お客さんに年配の方が多いせいか場内は落ち着いた雰囲気で、黙々とじっくり品定めするといった空気です。

ただ、個人的になんとなく物足りない。

なにが物足りないかと言われると難しいのですが…。初心者だから余計に感じるのかもしれませんが、なんと言うか、もうちょっと一対一、人対人、営業の匂いがしない相手と話ができたら面白いというか、こっちの身の入り方も違うのかなあ、と。

というわけで、結果的に、なんとなく満足してしまいました。意味もなくチラと時計を見て、しばらく考えたふりをして「波佐見行こうかな」とか一人呟いたりして。もちろん、駅前のメイン会場に行けば話は変わってくるのかもしれないし、時計も呟きも、誰の目も気にする必要はないのですが…。

もちろん有田焼きはもっと知りたい世界です。でも、今日は流れが悪いし、今回のところはこの辺で…。別の機会をまた待ちましょう、と。

なぜか、なんだか、言い訳がましい気持ちになりながら。有田を発ちます。

有田陶器市の有田陶磁の里プラザ会場。メイン会場は有田駅前らしいですが、じっくり見て回れていいです。

個人的に有田焼のイメージはこれ。巨大な皿、もしくは背丈ほどあるような巨大な壺。

波佐見の逆襲!


地図を見ると波佐見町と有田市は隣同士、ただし波佐見は長崎県で有田は佐賀県。少し前に波佐見焼きがだいぶ人気になっているという話を知って、無知なままに「へー、長崎にもそんな焼き物が盛んなところがあるんだ」と呑気に聞いていました。

でも有田の隣となれば、話は分かりやすい。おそらく文化圏、経済圏として有田と波佐見は同じか、近いものがあるんでしょうね。

今回の“焼き物シリーズの旅”(日帰りですが)に出かける直前、前からの知り合いが波佐見出身だったことを知り、彼が「有田焼きと言われている焼き物の半分は、実は波佐見で出来たものなのです」と力強く話すのを聞いて、「なるほどねぇ」と妙に納得していたのでした。

その彼も言っていたのですが、有田は佐賀、波佐見は長崎、佐賀は長崎に比べてよそから人を呼び込むウリが乏しいので、歴史的に有田焼きのピーアールにはとても力を入れてきた。一方で波佐見にも焼き物の文化はあったけど、観光と経済の資源がともに豊かな長崎県としてはさほど力を入れてこなかった。その結果、有田焼きは圧倒的に全国と世界に名を馳せ、波佐見の焼き物も“有田焼き”として出回ることになった。

本当かどうかは分からないものの。

そんな筋書きがあってもおかしくなさそうです。

となると、最近の波佐見焼きの人気ぶりは、長らく有田の陰に甘んじていた“波佐見の逆襲”となるのか?!

真偽のほどは??


あくまでカジュアル

波佐見の会場はその名も「やきもの公園」。

波佐見焼きは有田焼きと同じ磁器ながら、作風がより自由です。お客さんも比較的若め。


波佐見の陶器まつりの会場までもう少しという所で、工業団地の一角を借りたらしい駐車場へ誘導されました。臨時駐車場で、会場まではここからシャトルバスで行くそうです。

車を停めると、ちょうど来たシャトルバスは大型の観光バスでした。見ているとこのバスが3台巡回していて、しかも臨時駐車場は別の場所にあと2つあるようです。

そこまで来場者が多いのか。

半分ぐらい席が埋まったところでバスは動き出し、15分ほどで会場です。

なんとなく、来るまでは有田と似た雰囲気なのかなあと思っていたのですが、だいぶ違います。

確かにけっこうな人混みではあります。ただ、身動きがとれないほどではありません。お祭りとしてちょうど良く賑っているというか。

会場の中央に販売業者や大所帯の窯がいくつも寄せ合って出店し、それを取り囲むように個人や小規模でやっている窯が並んでいるようです。

ブラブラと歩いていると、まず客層の若さに気づきます。

一番目立つのは30代前半と思える人たちで、OLの友だち連れ風に、小さな子どもがいる家族、結婚してまだあまり時間がたっていないように見えるカップルも多め。

そして並んでいる作品を見ると、有田と同じ磁器でありながら、デザインが多彩です。

パッと見て“かわいい”ものが多い。

もちろん伝統的な有田焼き(風?)なものもありますが、カラフルな色使いでヨコ文字のブランドが似合いそうなものも多く、実際にアルファベットのオリジナルブランドを掲げた店がいくつもありました。

有田焼きは真っ白な表面に藍と朱が乗ってわりとビビッドな色彩のイメージですが、波佐見は意識して淡い色、そしてモノトーンを使っているといった印象です。

しかも、有田より安い。同じ大きさの器が有田で5,000円なら、波佐見は3,000円といったレベルでしょうか。


聞こえてくるのも主に女性の声で「かわいい」とか「この形いいね」とか「この辺全部セットで買っていきたい」とか、全般的に華やいだ声が多く、都内のこじゃれた雑貨屋に近いカジュアルなノリです。展示されるのも棚は棚なのですが、少しテーブルに置かれた雰囲気を漂わせたりして。

焼き物1つ1つで勝負するというより、皿、茶碗、マグカップ、箸置き、焼き物雑貨一式でライフスタイルを匂わせるブースが目立ち、そういう意味ではIKEAっぽいとも言えます。

なるほどねえ。こういう風だから人気なんだ。


夜は博多で


波佐見を後にします。夕方近く、16時少し前でした。


唐津、有田、波佐見、駆け足で3つの焼き物産地を巡って見て、乱暴だけどそれぞれの色を実感することができました。

いまの唐津はやはり若い作家さんが魅力です。歴史と格があるのに、手が伸ばせば触れられそうな不思議な心理的距離感。

有田は今回は苦戦しましたが、磁器が放つ正統派の透けるような上品さと絵付けの色彩は面白いです。

波佐見は有田焼きの技法に磨かれたうえで、あのなんでもアリな自由さは見ていて楽しく、まさに勢いを感じます。

唐津はもちろん、有田と波佐見もまだ何度か来ないと本当の良さは分からないでしょう。

でも、理解へと続く自分なりのとっかかりはつけられた気がします。

次へつなげよう。

あとはやはり、作家さんとゆっくり話す機会をどうにかして作りたい。そこですかね。


この後は筑前前原に戻って車を返して、駅から列車に乗ってまっすぐ福岡空港へ、向かいません。

博多で今日最後の寄り道です。

こっちもやはり駆け足になるでしょうが、

せっかくだから、ねえ。

軽く飲んで帰ります。

博多だからとりあえず明太子と、佐賀に行ったから呼子のイカも頼むかな、佐賀の日本酒も旨いし。


そうだ。佐賀、いろいろあっていいとこなんだ。

博多駅から歩いて5分ほど「蕨」という郷土料理を出す居酒屋で、対馬産あなごの刺身。

食べたのは初めてでしたがコリコリの歯触りが楽しく、白身で淡白かと思ったら濃厚な旨味にびっくり。

明太子と鯨ベーコン。

しあわせな時間です。